楽してお金を稼ぐ方法

【二】

 息を殺して様子を窺う。小屋から離れ、丘を登った先は崖。予想通りに海が見渡せた。だが予想していた盗賊のアジトが見つからない。拍子抜けだ。
 ――まぁ、簡単に見つかるようなら治安兵たちも苦労はしないだろうが。
 ディアはしばらくその場を探索し、何の手がかりも得られないと崖に向かって歩き出した。森の地面には細工された跡がないので、残るは崖しかない。
 落ちないよう気をつけながら海を覗き込む。
 崖下には張り出した屋根が見えた。その下にはちょうど飛び降りれるくらいの足場もある。
 もしかしたら、とディアは眉を寄せた。
 目の前に張り出す屋根のお陰で発見されにくくなっているだけで、本拠はここにあるのかもしれない。
 ディアは周囲を確認するとその場を離れた。真上からではなく、斜めの方向から見ようと試みる。身を乗り出し、予想が当たっている材料を見出せた。屋根と思しき場所と、足場として活用されているだろう場所には幾多の足跡が残されているのだ。はっきりとした足跡ではないが、そうと仮定して見れば分かるほどの微かな痕跡だ。
「素人集団ならこれくらいの細工で精一杯か。ご苦労なことで」
 ディアは揶揄るように笑う。
 行動のしにくさに目を瞑ってまで頭をひねったのだろうが、結局それはディアの目を欺き通せるだけのものではなく、こうして簡単に見つかってしまった。盗賊たちの無駄な努力に乾杯、だ。
「ま、同情する余地はないけどな」
 盗賊たちはまだ中にいるのだろうか。それとも既に出かけたのだろうか? 分からないことにはディアも動けない。いっそのことこのまま下りてひと暴れしてしまおうかとも思う。
 しばらく様子を窺っていると、小さな足場に大勢の足が現われた。
 ディアは素早く身を伏せて窺う。同時に自分の避難場所も探す。近くには手頃な大きさの岩があったので、隠れる時はそこにしようと決めて観察を続ける。
 姿を見せたのは覆面を被った者たちだった。中央にいる者が指示を出しているようだ。商人たちの仕入れルートでもない、重要とは呼べないこの街道に出没する盗賊たち。中途半端な彼らにも一応の統率はあるようだが、その子ども染みた結束に失笑が洩れる。
 覆面の1人がフック付きの縄を持っていた。それを利用してこの崖を登るのだと分かる。
 まったくご苦労なことだ。
 崖にフックが取り付けられるのを見計らい、ディアは先ほど目をつけていた岩へと素早く身を隠した。覆面たちが登ってくるのを岩陰から確認する。
 結構な数がいたようだ。
 登った者から順に走り出していく。複数の足音が遠ざかっていく。
 ディアは岩から顔を出して彼らの数を確認した。
 3、4……6人。
 遠くなる影。それらを見送り、もう視界に誰もいなくなった事を確認してから岩陰から出た。
 先ほど海を覗き込んだ場所まで戻って再び崖を確認した。見張りの姿はない。中には誰かが残っているかもしれないが、心配していたらいつまでも奪えない。いたらいたで叩き伏せればいいだけだ。
 ディアは決めると崖の真上に移動した。場所を確認するために静かに覗き込む。ここからは僅かな足場が見えるのみだ。下方では海が白く弾けている。
「失敗したら海の藻屑か」
 断崖絶壁と呼んでも間違いではない。
 ディアは男たちが戻ってこないかを確認してから剣を抜いた。鞘は背中に縛りつけ、剣の柄を歯でしっかりと咥えて飛び降りた。
 ヒヤリとした冷たい汗が背中を流れ落ちる。意識が安全な場所に逃げ込もうとするのを感じて奥歯を噛み締めた。睨み付けるように足場を捉え、目測誤らずに着地する。あと一歩ずれていたら着地できずに海へ落下していただろう場所だった。
 ディアは安堵しながら素早く剣を構えて洞の中を睨んだ。
 ――誰もいない。
 目の前に大きな洞が口をあけていた。月光に照らされているものの、奥が深いのか闇に満たされている。動く影は何もない。
 慎重に歩を進めながら目を凝らす。
 洞の内部はただ掘り返したような単純なものだった。それらの作業をあの男たちがやったのかと思うと可笑しくて、ディアは小さく笑みを刻む。警戒心は怠らずに目を配る。最深部では小さな炎がランプに揺れていた。
「なんだ。誰もいないんじゃん」
 ディアは胸を撫で下ろした。
 ランプのお陰で行き止まりが目に入った。炎の影が人影に見えて驚きはしたものの、誰かが隠れているということはない。
 肩から力が抜けると今まで見えてこなかった部分まで見えてくるようになるものだ。
 どうやら男たちはこの洞に寝泊りしているようで、雑多なものが転がっている。微かな生活臭まで漂っている。ディアは辺りを物色しながら腰帯に入れていた袋を取り出していた。この袋に金目のものを集めようという魂胆だ。
「お」
 目を皿のようにしていたディアは目当ての物を見つけて表情を輝かせた。ランプに照らされたそれに近づくと、やはり金品だったと知れる。男たちは結構な数を襲ってきたのか、収集物はそれなりの額にのぼる。
「ガラクタばかり……か。ま、ここら辺の街道じゃこんなもんだろ」
 まるで自身が盗賊団の親にでもなった気持ちで予測を立て、金品の種類をその場で確かめていく。集められた物は一定水準を超えたものばかりだ。飛び抜けて高価な物はないが、それでも一財産は築けるだろう。
 この近くには商業の盛んな都市もなく、この街道も商人ルートではない。あまり期待していなかったので落胆は少ない。ディアは手際よく袋に収めていく。
「これだけあればしばらく旅費には困らないな」
 これでようやく枕を高くして眠れるぞ、とディアは上機嫌で立ち上がった。あまり長居をして男たちと鉢合わせになるのは避けたい事態だ。とっととずらかろう、と思いながら洞を抜けて見上げたディアは思わず呻いた。
 崖の上から1人の男がディアを覗き込んでいた。
 どうやらちょうど帰って来た所のようだ。思いきり目が合った。
 ディアは反射的に洞に身を戻したが、見つかったことは変わらない。直ぐに男が飛び降りてきた。着地の仕方はディアよりも安定しており、そんな所はさすがかと妙な感心をしてしまう。
「くっそ」
 まさか本気で戦闘回避できるとは思っていなかったが、心の準備が済まぬまま強制されると動揺する。背後から奇襲攻撃を仕掛けられた気分だ。心臓に悪い。
 ディアは抜き身のままだった剣を構え直し、金品を収めた袋を地面に置いた。
 1人なのだろうか。飛び降りた男に続く者はない。剣を持った覆面の男が無言のままディアに近づいてくる。
「1人なら都合いい。応援呼ばれる前にさっさと終わらせる!」
 飛び込んで剣を振るうが、簡単に受け止められた。ディアは舌打ちして力比べをしようとしたが、男の鳩尾に蹴りを入れた。このような所で体力を消耗している暇などない。
 蹴られた男が地面で軽く咳き込んでいる間に袋を掴んで走り出す。洞から顔を出し、袋を力いっぱい崖の上に放り投げる。屋根が邪魔をしていたが、うまくいったようだ。握りこぶしで嬉しさを示す。
「っと」
 回復した男が切りかかってきた。その攻撃は鋭く、ディアは慌てて体を捻る。距離を取ろうと後退するが、危うく崖から落ちそうになって顔をしかめる。その間にも男が二撃目を繰り出してきた。しかし今度は難なく躱す。男の脇をすり抜けて場所を確保し、男が振り向いた瞬間に飛び跳ねた。屋根に手をかけて乗り上げ、そこから更に崖の上へと跳ぶ。
 あまりにも素早い動きに男は呆れたような雰囲気を醸していた。見上げるしかない男にディアは不敵な笑みを見せる。
「ふん。ざまーみろ」
 だが崖上で男の仲間が待ち伏せていたら終わりだ。
 ディアは素早く体勢を立て直し、周囲を警戒する。予測していた危険はない。それでも注意深く警戒し、ようやく笑みを洩らす。
 崖の上に放り投げていた袋を大事に抱え上げて勝利に表情を輝かせた。叫び出したい衝動を堪えて丘を駆け下りる。
 これで小屋に戻り、あとは男たちを待ち伏せして叩きのめし、治安部隊に突き出せば褒賞も望めるだろう。これで自由に旅を再会できる。セイにたかるということもなくなり――
 ディアは表情を強張らせた。そこまで喜び全開だったが、気付いた瞬間、自分の考えのなさに青褪めた。
 男たちの拠点から街道の小屋までは目と鼻の先。商人ルートでもないこの街道で男たちが襲い掛かるのは、真っ先に小屋ではないか。
 これまで一人旅が長かったため、セイの存在を考慮していなかった。彼は賊の存在など考えもせず、慣れない長歩きで疲れた体をひたすら休めているだろうに。セイの剣の腕は信じられるが、突然の襲撃者たちに対応できるとは思えない。せめてディアも素直に小屋で大人しくしてれば、二人で何とか撃退できていただろうに。
「無事……だよな?」
 不安に胸が締め付けられる。無事に決まっている、と鼓舞するように言い聞かせたものの不安は高まる。そして、嫌な予感とは得てして当たるものなのだ。
 小屋の扉は全開に開け放たれていた。礼儀正しく大人しいセイとしては考えにくいことだ。
「セイ!」
 慌てて飛び入って絶句する。
 部屋には争いの跡が醜く残されていた。
 簡素な調度品は壊れて散乱し、その間を縫うように男たちが倒れている。
 セイの仕業だ、と何の根拠もなく確信した。彼と勝負をした時のことを思い出す。可憐な外見に惑わされているが、彼は間違いなく男なのだ。セイが本気で抵抗をしたら誰も勝てないに決まっている。
 ディアは願いにも似た気持ちを抱えながら袋を投げ捨てた。寝室に走る。狭い廊下に顔を出した瞬間、開け放たれたままの扉が見えて唇を噛んだ。それでも彼の姿を見るまでは、と逸る心のまま寝室に飛び込み、望んだ人物がそこにいない事実に歯噛みした。
 居間と同様、寝室は荒らされている。シーツは無残に切裂かれている。寝具も散乱し、割れたランプが床に転がっていた。
 数時間前に見た、寝台に横たわるセイの後姿を思い浮かべたディアは、まるで目の前が黒く塗りつぶされていくような錯覚に見舞われた。体が傾いで壁に手をつける。
「連れて行かれた……?」
 力はどうあれ、超絶美少女の容貌を持つセイだ。男たちが一目見て気にならない訳がない。賊の中には人身売買のルートに精通している者が多い。流されてしまえば二度と会えないだろう。
 沸々とした怒りを覚えながらディアは居間に戻った。
 一番手近に転がっていた男の胸倉を掴む。
「……っ、おい、お前らっ。セイをどこへやった!?」
 叩き起こそうとしたが、男の反応はない。胸倉を掴んで乱暴に揺さぶってもみるが起きない。ディアは舌打ちし、他の男たちにも同じような事をしたが、誰からも反応はなかった。意識が深くまで沈み込んでいるのだろう。
「セイの奴……これだけできるなら逃げてろよな!」
 時間が経てば経つほどセイを追いかけることは難しくなる。一度商人の手に渡ってしまったら、彼らは独自の掟をもって他者に洩らすようなことはしない。悪人であっても聖人であっても、彼らにとっては商売こそが基本。そこに正義が入り込む余地はない。
 朝になって男たちが起きるまで待っている余裕などない。セイを追いかける為にはどうすればいいのか。
 悔しくて唇を噛みかけたディアは弾かれたように顔を上げた。
 先ほど剣を交えた男を思い出す。彼を捕まえて吐き出させれば、まだ間に合う。
「ああもう! あいつの父に合わせる顔ないぞ私!」
 苛々と飛び出しかけたディアの前に、剣が突き出された。
 飛び出した勢いで危うく喉を貫かれかける。ヒュッという悲鳴が喉で鳴り、ディアは心臓を鷲掴みされたような気になりながら退いた。
「お前!」
 突き出された剣を自分の剣で弾き、ディアは小屋の中に逆戻りした。振り返り、現われた男を見て目を瞠る。そこにいたのは先ほど剣を交えた男だった。ディアを追いかけて来たのは仲間の弔い合戦とでもいうつもりなのか。ディアは不思議な高揚を覚えて唇を歪めた。
「セイをどこへやった?」
 男が訝るように動きを止めた。
「ここの奥に寝てた奴がいただろう。金髪で、女みたいな奴だ」
 男の反応はない。もしかして知らないのだろうか。
 ディアは苛々を募らせながら剣を構え直した。
「言っておくがあいつはな、あんななりでも男なんだよ。売ったって金にはならねぇんだ、さっさと返しやがれ!」
 だがこの言葉にも男は反応しない。ディアは苛立ちが頂点に達し、更なる罵声を浴びせようとしたが、先に男が動いた。タイミングを計ったかのように切り込んできた男に、怒りを込めて剣を打ち下ろす。
「そっちの方が分かりやすくて助かるぜ!」
 打ち下ろした剣は弾かれる。すぐさま突きが来るが、身を屈めてディアは避ける。男の横腹を狙って剣を薙ごうとした。
 ――その瞬間。
 勢い良く振り上げられたディアの剣は、壁に突き刺さった。
 周囲を考慮に入れていなかったディアの落ち度だ。
「げっ!?」
 予想外の展開にディアは慌てる。剣を引っ張ったが、どんな力を込めていたのか抜けない。そして絶好のその隙を相手が見逃してくれる訳がない。
 瞠られたディアの視界に、勢い良く振り下ろされようとする剣。
 セイを助ける者がいなくなる――そんな思いが胸を占め、強く叫んだ。
「セイ……ッ!」
 目を瞑って歯を食いしばる。顔を背けて痛みに耐えようとする。
 しかし、来るはずの衝撃はこない。もしや痛みを覚える間もなく死んでしまったのだろうか、と思ったものの、そんなことある訳ないと否定する。一体なにが起きたのだろうかと恐る恐る目を向けようとした時。
「何ですか?」
 決して鋭くない、柔らかなアルトの声。それは聞き慣れたセイの声だった。
 ディアは勢い良く顔を上げた。
「え……」
 セイはいなかった。代わりに目の前にいたのは、やはり先ほどの男だ。彼はディアの肩先で剣を止めている。
 なぜ一息に殺さないのか、疑問に思うよりも先に、ディアはセイを探した。
 部屋の中を見回しても彼の姿はない。
 なら先ほどの声はどこから聞こえたのだろうか。
 ディアの視線が再び、目の前の男に戻った。
 覆面の間から覗く瞳は――紫紺。
「……セイ?」
「ええ。そうですよ」
 半信半疑で呟くディアの前で、覆面を被っていた男は簡潔に頷いた。剣を下ろすと覆面を取り去る。その下からは明るい金髪が零れてきた。現われたのは、間違いなくセイだ。
「あ、はは、はははは……は、はぁ……?」
 ディアは笑っているのか溜息なのか良く分からない声を出し、力なく壁に背をつけた。そんなディアを見ながらセイは不機嫌そうな表情を保ち続けている。
「人の部屋に忍び込んできて夜這いかと期待したのに、ディアは1人で出かけてしまいますし。どこに行ったのかと思っていれば見知らぬ方々に襲撃を受けますし。これくらいの報復は許されますよね」
 ディアはセイを見上げながら徐々に表情を緩ませていった。やや解せない単語が混じっていたが、強い安堵の前には無力だ。セイが無事で良かったという思いは揺ぎない。
「1人で勝手なことしないで下さいね?」
 セイは座り込んだディアと視線の高さを同じくするように膝を曲げた。咎めるような視線がディアに向けられる。しかしディアはそんな言葉など耳に入らず、ただ目の前に迫ったセイに抱きついた。セイはやや驚いたように体を引いたが、直ぐに思い直したのか抱き返す。剣呑だった紫紺の瞳が和らいだ。
「無事で、ほんっとに良かった……セイ」
 ディアはセイの肩口に額をつけて呟いた。しがみ付くように腕を回し、安心しきって本音を呟く。だから――反応が遅れた。
「……この馬鹿セイーーっっ!」
 それまで静かだった部屋に騒音が満ちた。ディアがセイを思い切り突き飛ばしたのだ。
 セイはそのまま床を転がり、倒れていた男たちの側で尻餅をついた。
「いたたた……」
「お、お、おま……!」
 しかめっ面で起き上がるセイだが、首筋を押さえたまま真っ赤な顔で絶句するディアを見上げて笑みを零した。その笑顔にディアは怯えたように体を揺らせてセイから遠ざかる。
「来るな! お前、もう私の側に寄るな! しっ、しっ!」
 手で追い払うような仕草を見せるとセイは肩を竦める。
「まぁ、旅は長いですからね。ディア?」
 同意を求められるが、ディアには答えられない。しかしセイは答えなど元から求めていなかったのか機嫌よく踵を返した。床に転がっていた男たちを縄で纏め上げていく。
 ディアはセイの後姿を見ながら、口付けられた首筋を、まだ手で覆っていた。


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「え、ちょっと待てよセイ!?」
「待ちません」
「いや、ほんと待てって!」
「駄目です」
 翌朝。セイとディアの声が街道に響いていた。二人の前にいるのは、先日盗賊たちへの注意喚起を促した三人組だった。丁度折り返してきたらしい彼らを引きとめ、セイは昨夜の出来事を話し、捕らえた男たちを引き渡そうとしていたのだ。
 まだ若い彼らは当初、思わぬ収穫に喜んでいたが、現在は困った顔でセイとディアを見比べていた。
「覆面たちなんか持ってかれても困らんからいいけど、あの宝は私が奪ったんだぞ!? なんでそれまで渡さなきゃいけないんだよ!」
「元々は襲われた旅人のものでしょう。この方々にお渡しして、ちゃんと還元して貰います」
「襲われた奴らの手元に戻る訳ないだろ! こいつらの懐に落ち着いて終わりだ!」
 指を刺して怒鳴りつけるディアに、指された男は苦笑する。何も言わないのは賢明な判断だ。
「それより私が持ってた方がよっぽど有効利用できるってもんだろう!」
「いいえ、駄目です。さ、早く連れて行って下さい」
 すげなく断られたディアは絶句した。金品を預けられ、事態を見守っていた男たちは戸惑いながらもただ頷く。
「ああ……街道の安全のため、盗賊たち捕縛の協力を心より感謝する」
「感謝なんかいい! 金をくれ!」
 覆面たちは馬車に乗せられ、セイたちと話をしていた男とはまた別の男が引っ張っていく。ディアたちが口論している間に手配を済ませた馬車らしい。
「お勤めご苦労様です」
「あああああー……」
 去っていく男たちにセイは爽やかな笑みを向け、ディアは未練がましく見つめてうな垂れる。
「楽をして稼ごうとするから昨夜のような目に合うんですよ。次の町に行ったら、ちゃんと正規の方法で稼ぎましょう」
「お前さえ……お前さえいなかったら……! くっそおおお、私の金ーーっっ!」
 心底悔しげなディアの声が、街道に響いた。


 END